タンザニアの「お話」その0

 

 皆さんはどれくらい日本の民話や昔話を知っていますか。浦島太郎・桃太郎・かぐや姫・猿蟹合戦・鶴の恩返し・瘤とり爺さん・一寸法師・ブンブク茶釜・・・・などなど

 でも、その話をきちんと話せますか。私の場合、桃太郎は完璧です。理由は娘を寝かし付けるのに何十回と絵本を読んでやったからです。それにてもどうして子どもはああも同じ話を読んでくれとせがむのでしょうか。同じ話を読み続けていると、眠たくなるのは子どもより、大人の私の方。「パパ!寝たらあかん」と何度泣かれたことか。皆さんはもう卒業していますよね。懐かしいでしょう、子育てにはよくあることですよね。でもその甲斐あって、今では桃太郎を絵本なく一字一句言えるほどになりました。

 ところで、絵本はテレビと違い、一枚の絵から子どもがイマジネーションをつくり上げるという媒体です。そして、絵本なしの「お話」は、子どもを空想の世界に運んでくれます。タンザニアにはそんなお話がたくさんあります。彼らはテレビ漬けの日本人よりはるかに想像力豊かな人達です。そこで、第0号としてタンザニアの生徒に書いてもらった「ニワトリとワシ」の話を紹介します。

 タンザニアのニワトリのうるさいこと、タンザニア時代、私は毎日ニワトリの鳴き声に起こされていました。タンザニアの家では、たいていニワトリ小屋があり、早朝から扉を開けます。すると隣近所の草などをついばむのです。ですから、私の家の周りにもニワトリ達はやって来て、草を食べ、大合唱をするという訳です。

 日本人にとって「コケコッコー」がニワトリの鳴き声、アメリカ人は「クックドゥドゥドゥ ドゥ」とか、タンザニア人にとっては「・・」。彼らにとってクク(ニワトリ)は卵を産んでくれ、お肉となる鳥で十分なのです。懐かしいな・・ 自分で、羽をむしり、首を切り、さばいた鶏肉の美味しかったこと。日本のブロイラーとは大違いで、身がよく締まり、味わい深いのです。

2002年1月  

 

▲陽気なタンザニアの子供たち

 

ニワトリとワシ

 昔、ニワトリとワシはたいそう仲のよい友達でした。ですから、ワシは大切で高価な指輪をニワトリに貸してやりました。ニワトリは嬉しそうに指輪を脚にはめていました。

 ある日のことです。指輪をつけたニワトリが歩いているうちに、指輪をなくしてしまいました。さあ大変です、ニワトリは走り回って指輪を探しました。でも見つからないのです。仕方なく、ニワトリは親友のワシに指輪をなくしたことを言いました。ところが、ワシは指輪をなくしたことを信じてくれません。それどころか、ワシはニワトリを憎み始めました。

 そのことがあってから、ワシはニワトリの天敵となりました。ですから今でも、ワシは空中からニワトリと食べてやろうと狙っています。そしてニワトリはいつまでたっても、指輪を見つけようと地面をつついているそうです。


"Hen and eagle"
Simon Rwebogonia という生徒より
1993年